
水彩画は、カメラが本格的に普及する1900年ごろまで、世界中で起こっている自然災害や戦争、エンジニアリングなどを記録する重要なツールとして利用されていました。
プロやアマチュアなどに関係なく、科学者や植物学者、兵隊などが、世界中のさまざまな場所や時代で描き、その膨大な作品の数は数え切れません。
しかし、それらの作品は展示するには厳重な取扱が必要で、ひっそりと美術館の棚に保管されています。もしくは、個人の家族アルバムなどに挟まれ、日の目を浴びるチャンスが全くないというケースも。
そんなレアで歴史的な水彩画を世界中から8万枚以上集め、自由に閲覧できる無料オンラインデータベース Watercolor World を今回はご紹介します。
Watercolor World とは?
Watercolor World は、世界地図をクリックするだけで、1900年以前に描かれたその土地の様子を、水彩画で閲覧することができる、今も進行中のオンラインプロジェクトです。
世界中の美術館や機関、個人とパートナーシップを結ぶことで実現した壮大な計画で、閲覧できる作品はどれも一枚ずつ手作業でスキャンされたそう。このスキャン作業、実は日本のFujitsuもこのプロジェクトに参加しています。
Watercolor World の使い方
使い方はとてもシンプルで、表示された世界地図の中からお好みのロケーションを選択できる「ロケーション」検索と、タグやカテゴリー別に調べる「キーワード」検索があります。
カテゴリーやタグ別、国別、アーティスト別のフィルタ検索のほか、スライダーを左右に動かして時代別に調べることも可能です。
もうひとつの方法は、表示された世界地図からお好みの地域を選択する「ロケーション」検索。地図をズームアップすると、関連する作品が同時に表示される嬉しい機能も。
各ページでは、作品をズームアップ、拡大して閲覧することができるので、環境変化のリサーチや学校の授業用教材としても利用されることが期待されています。
国などのロケーション、カテゴリー、タグなどより詳しい情報も一覧でまとめられており、どれも手動による作業だそう。
クレジット表記などライセンスに関する項目がこちら。CC BY-NC-NDという、クレジット表記による表示が可能なライセンスが中心となっています。
では、実際に公開されている水彩画の一部を見てみましょう。1833年に起こったベスビオ火山の噴火を描いた作品。
image © Devonshire Collection, Chatsworth. Reproduced by permission of Chatsworth Settlement Trustees. | Licence: All Rights Reservedh
高級感のあるゴージャスな雰囲気が今の残る、英国ロンドンのハイドパーク(英: Hyde Park)、1851年作。
Royal Collection Trust/© Her Majesty Queen Elizabeth II 2018 | Licence: All Rights Reserved
Image is used from www.hermitagemuseum.org, courtesy of The State Hermitage Museum, St. Petersburg, Russia | Licence: All Rights Reserved
日本の様子を描写した水彩画もありました。こちらは、1851年作、江戸時代の日本の様子を残した一枚。この当時、銃をもった武士による警備がされていたのにも驚きです。
© National Maritime Museum, Greenwich, London | Licence: CC BY-NC-ND
佐賀県にある呼子では、のどかな美しい風景が描かれています。1868年作。
© National Maritime Museum, Greenwich, London | Licence: CC BY-NC-ND
現在およそ80,000枚の水彩画が無料公開されており、その数は今後も増えていく予定です。
欧米を中心とした、歴史的な絵画のデジタル化の波は、さらに加速しそうな予感大。世界的に有名な美術館も、収蔵している作品の無料ダウンロードを開始しています。
サムネイル@ : A Perch of Birds (1880) by Hector Giacomelli – RawPixel
参照元リンク : Our lost world in watercolours – the paintings that documented Earth – The Guardian